音のない夢 9
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ゾロがいなくなって十一日目の朝が来た。
俺はもう、そのことに慣れつつあった。窓を開けて風を入れ、煙草を一本取り出して咥える。火をつけて煙を吐き出すと、心が静かに凪いでいく。
凪いで……。は。まったく冗談じゃねえ。そんなこと俺はまったく望んじゃいねえってんだよ。
最初のうちはどうしてだかわからず悲しくて寂しくて動揺したが、段々怒りの気持ちが目覚めてきて、最近じゃそっちの方が断然勝っている。最近はもう、いつオーナーに切り出そうかと、そればかり考えている。
俺はゾロを見つけるつもりだった。何があったって離れてなんかやらねえ。少なくとも、ゾロの口からはっきり聞かないうちは。
はっきり聞かされる事を想像すると胸に瘧みてえなもんが走るが、そんなのは会ってから考える。
ゾロの顔が見たかった。見て、そうして、どうしても言いたいことがあった。こんなことならもっと早く言えばよかったとここのところずっと後悔していた。もうこんな思いをするのはたくさんだ。
ゾロがいなくなった朝、向こう岸の町を目指して砂漠に入ったキャラバンがあったという話聞いてから、俺の胸にはひとつの目算があった。
そのキャラバンは港に繋留中のとある船の乗組員連中と港の日雇い連中がほぼ半々くらい構成されていて、しかもその船の荷運びをゾロが手伝っていたという記録があった。
ラクダを使ってうまくやれば向こうの町へは四日で行ける。単純な往復なら八日。向こうで仕事を済ませる時間を加味すれば、十日前後でこっちに戻って来られるはずだ。
酒場をしらみつぶしに当たって、そのキャラバンの連中が上陸後呑んで騒いだ店を見つけた。店主はゾロがいたかどうか覚えていないと言ったが、その店がたまにゾロが立ち寄る店のひとつだって事を俺は知ってる。
あの日、知り合った男に奢ってもらったと言ったゾロ。俺は自分の立てた仮説が八割くらいは当たってると思ってる。キャラバンは今日明日くらいには戻るだろう。だから問題は、その中にゾロがいなかった場合の事だ。
煙草を一本吸ってしまってから、俺は窓を閉めて、階段をおりた。キッチンに立ってひとり分の朝食の準備をする。これだって本当にむかつく行為だ。この俺にひとり分のメシを用意させるなんて。本当に腹が立って仕方がない。
がちゃ、とドアが開いた。俺はそっちへ反射的に振り向いた。
信じられないものがいた。
「……ただいま」
「お……」
言葉が出ない。口を丸く明けたままで、きっと今俺はすごいまぬけ面をしてる。顔を見たら言ってやろうと思ってた言葉が全部吹っ飛んで、頭の中が空っぽになっちまって。
「おかえ…り」
なんとか言ったが、ゾロは俯いて脱いだマントをパタパタと叩いている。この馬鹿。
「こら。家の中でやるんじゃねえ、埃が立つだろ」
喉がつまって声がうまく出ない。胸がばくばくして、足も手もぶるぶる震える。
「…おう」
ゾロはドアを開けていったん外に出て、ばさばさと降って砂を払う。その背中を見ていたらなんだか鼻の奥がツンとしてきた。涙が出そうだ。俺はフラフラと、招き寄せられるみたいにそこに近づいていく。
「おい」
腰に手を回して、背中に顔をくっつけた。ああゾロだ。あったかい。ついさっきまで俺の腹のそこでぐらぐら煮えていた怒りと言う名のスパイシーな煮込みは、煮込みすぎて全部蒸発してしまったのか、今はもうきれいさっぱり消えていた。
「お帰りゾロ」
「さっき聞いた」
「なんか言うことあんだろ…」
「ああ」
ゾロは今思い出したみたいにぱっと顔を上げて、振り向こうと体を捩ったので、俺は手を離してゾロを解放した。ゾロはドアの外に出て、何か包みを持って戻ってくる。
「ん」
そう言って突き出した皮袋がふたつ。両手で、口の部分を握って持っている。
「何?」
ゾロはとくに表情も変えないまま、ぱっと手を離した。
ド!ジャラリ。鈍い金属の擦れる音。
「え?何?金?」
俺はしゃがんでゾロの足元でくたりとなっている袋の口を解いた。中にはどっさりつまった紙幣と金貨。一体いくらになるんだ?
「すげ…。え、キャラバンの護衛ってこんなに金になんの?」
「…知ってたのか?」
見上げるとゾロが驚いた顔をしている。俺は笑って、なめるなよ、と言った。ゾロはふいと横を向いてきまり悪そうにしている。ゾロが話してくれるまで待つべきだったのかもしれない。知っていると言うことを隠して…。でももうバレちまったし。
「ちゃんと聞くから、話してくれよ」
ゆっくり立ち上がって、正面から顔を見た。頬が砂で汚れている。それに汚れは砂だけじゃない、あちこちに傷が出来て、上着に血がついてる。
「なにこれ」
頬の赤い筋を親指で擦りながらよく見てやると、ゾロの血じゃないような、テンテンと飛び散ったようなあとが、ほかにいくつもある。ゾロは白々しく視線を反らしている。この野郎。俺は肩を上下させ、大きく溜息をつく。
「……南オアシスの盗賊だな。襲われたのか?」
「いや」
「じゃあなんだよこれ!」
「襲…った?」
「わかんねえのかよ!」
「うるせえな。帰って来たんだからいいだろ。夜通しラクダに揺られてへとへとなんだ。後にしろ」
そう言って、バスルームに足を向けながら上着をばさっと脱ぎ捨てた。ゾロの背中が俺の目の前にあらわになる。つややかな小麦色の背中。俺は胸のあたりが苦しくなって、それ以上言葉が続かない。聞きたいことはたくさんあるのに、ドアの向こうにゾロが消えてしまうまで、馬鹿みてえに突っ立ってた。
とりあえず落ち着いて考えてみよう。深呼吸をくりかえし、俺はキッチンに立って、とりあえず手を動かしてみた。ベーコンとチーズ、卵。空豆のスープ、レタスと茹でたアスパラガスを添えて。それから、ぶどうを洗ってひと房まるまる。パンを温めてコーヒーを入れたら、丁度ゾロがシャワールームから出てきた。俺はとりあえず手招きしていつものように言う。
「飯を食え」
ゾロは眠そうな目をしていかにも面倒くさそうだったが、俺の言葉に素直に頷き、テーブルについた。
「いただきます」
「ん」
かちゃかちゃと食器の擦れる音。自分以外のたてる音がする。窓から差し込んだ太陽の光がテーブルの上を白く染める。朝日を浴びて、強張っていた手足が解れていくみたいだ。
ところで俺は、まず手近なところから切り出してみる事にした。
「で、あの金なんなの」
「賞金」
「……やっぱ襲われたのか」
「違う」
そこで言いよどむのは何か言い難いことがあるからだ。俺は無理やり聞くのはよそうと思った。ゾロは疲れてるし、俺もそうだ。ゾロのいない十日間の俺の憔悴っぷりと来たら。
「おめえ痩せた?」
「…かもな。あんまり食えなかった」
「俺のせいか」
「ばあか。うぬぼれんな」
あ。違った。帰ってきたらこういうんじゃなくて、もっと違うふうにしようと思ってたのに、またしても俺は失敗している。
「まあ、お前がいなくて寂しかった、よ」
そう言って、ちらっと上目遣いでゾロを見る。
(うわあ…)
ゾロは困ったように眉根を寄せて俯きかげんだ。少し頬が赤いのは決して熱いスープを飲んだからじゃないと思う。ゾロがこんな顔をするなんて。俺は頭の奥でジリジリと焼ききれそうな繊細な糸の存在を必死で感知しようとした。
ゾロは皿の上のベーコンやらオムレツやらを一気にフォークでかきこんで、スープを飲み干すと、口の中をもぐもぐさせながらぱん!と胸の前で手を叩き、がたがたと席を立った。
「おい」
顔をそむけて走り出し、階段を駆け上がる。
冗談だろう。そんな反応されたら、俺はいったいどうしたら…。
「くっそ…」
洗濯をするつもりだったからいつもより時間に余裕がある。俺は時計を確認した。出勤まであと一時間半。十分だ。
二階に上がったゾロはベッドに腹ばいになって、顔を伏せていた。もう眠っているんだろうか。俺はそっと近づいて緑の後頭部に顔を寄せた。洗いたての髪の匂い。ふう、と溜息をつく。
「よるな」
「なんでだよ」
「眠いんだよ」
「寝ていいよ。ちゃんと上向いて、ケットをかけて寝ろよ」
「このままでいい。お前早く仕事いけよ」
「まだ時間じゃないし」
言いながら、ぷっと吹き出した。別になんにも変わってないじゃねえか。ものすごい安堵感が一気に体を駆け巡って、俺は今にも脱力感に負けて倒れそうだ。ゾロがいない間に様々にめぐらせた嫌な想像でこちこちになった体が緩くなって、血がめぐり、全身にゆきわたり始める感じだ。
「笑うな」
「笑ってないよ」
「嘘つくな」
「ほんとだ」
そう言ってみても声が笑ってるのは確かだからゾロが疑うのも無理はない。
「ほんとだって。顔をみてみればいい」
「いやだ」
「なんでだよ」
限界だった。俺はゆっくりベッドに手をついて乗りあがり、ゾロの背中に覆い被さるように横たわった。腕を回してぎゅっと抱き締める。ゾロは体を固くして息も止めているようだ。
何か言いたかったけど、なんて言ったらいいのかわからなかった。お前がかわいくてたまらないんだよ、なんて事を、言ってしまっても、いいんだろうか。かわいいっていうのは見た目とかそういうことじゃなくて、いや、見た目もかわいいと思ってるけど、じゃなくて、もう、おまえが生きて動いてるってことそれ自体が。お前っていう存在そのものが。そしてそれを思う気持ちは俺の中の普段は表に出せないでいる柔らかい部分の真ん中であったかく息づいているんだってことを、いったい、どうやってお前に知らせたらいいんだろう。
あの時、榛の丘で炎に照らされた横顔を見ながら。
あの時、死の淵で懸命に踏みとどまる荒い呼吸を聞きながら。
いつだってお前こそが俺を生かしてくれていたんだってことを、どうやってお前に伝えたらいいんだろう。
「ゾロ…」
ゾロはじっとしたまままったく反応しない。
「ゾロ、こっちむいて」
「重い」
「重くねえ。なあ、こっちむいてくれ」
ゾロは少し顔を傾けて俺を見上げた。目を険しくしていて、仏頂面だ。俺が笑うと、また困ったように眉根を寄せた。俺はゆっくり顔を近づけて、皺のよったそこに唇を押し当てた。ゾロはびくっと体を緊張させて、再びさっと顔を伏せてしまった。
俺の溜息が聞こえたのか、ゾロはもう一度、恐る恐る顔を上げた。もう一回笑ってみたけど、今度はちょっと、情けない顔になってるみたいだ。でもそれを見たゾロがくるんと体を表に向けたので、俺ははずみで横に転がされた。
横向きになってお互いの顔を見合わせる。ゾロの黒い瞳のなかにはとまどいでいっぱいの俺が映っている。
「サンジ」
「なに」
低く囁くゾロの声。リネンの上を滑って俺の耳に心地良く入り込む。ぎゅっと目を瞑る。さっきからずっと、すごく胸が痛い。
「俺は、お前がしたいようにすればいいと、いつだって思ってる」
どういう意味だろう。俺がゾロの顔を見つめたままで黙っていると、ゾロは一度ぎゅっと唇を固く結んで、悔しそうな顔をした。それは言いたい事をうまく言えないもどかしさ?俺は自分の都合のいいように取りすぎてるだろうか。
「俺だって、いつもそう思ってるぜ?」
ゾロの目は暗く澄んでいる。思いを溜め込んで深みを増して。ああお前、いつからそんな目をするように?
「あのまま、……帰らないつもりも、あった」
俺は黙っていた。目の縁がピリピリ痛む。
「道中、ずっと考えた。お前はどこかにいつか自分の店を構えて、お前の料理をいろんなやつに食べさせられるようになったらいい。でも俺は、そこにはいられない。俺は旅を続けなくちゃいけねえから」
ゾロは一生懸命言葉を探しながらぽつりぽつりと紡いでいく。
「だから、俺はそんなに殊勝じゃねえから、もしお前が店をやりたいから残ると言ったって、お前を置いてひとりで行くだろう。でもお前は多分、そうした方がいいとわかってたって、ひとりで残るなんて事は言わない。…俺を置いていけねえから。それを思いつきもしねえからだ。ガキの頃からずっとそうやって来たからそれが当然だと思い込んでる」
「違う」
「違わねえ。考えろ」
「考えたって同じだ。おめえそんな事考えてたの?」
ゾロは俺から視線を反らし、一度天井を睨みつけて、ゆっくり目を閉じた。一緒に細く息を吐く。俺は体を伸ばしてその唇にキスをおとした。ゾロの唇は柔らかくて、でも少しかさついていた。砂漠帰りだからかな。
「お前がいなくて飯が食えなくて痩せちまったってのに、俺はそれすら当然だと思ってるって、お前はそう思うっていうのか?」
ゾロは驚いて呆然としている。キスをしたことはなかっただろうか。遠い昔、まだほんの子供の頃になら、あった気がするが。でもしたいのはこんなキスじゃなくて。
「サンジ…」
「なに」
ゾロは手を伸ばして、肘をついて見下ろす俺の垂れ下がった前髪を軽く梳いた。なんだか怖い顔をしている。
「どうしたいか言え」
そうだよゾロ、まずそれを最初に聞いてくれよ。俺は笑って頷いた。ゆっくり体を傾け、ゾロの胸に頭をつけ、頬を押し当てる。
「俺はずっとこうやってたい。お前と離れたくない。飯食えなくて死ぬ」
はは、とゾロがかすれた吐息まじりの笑い声をもらす。頬を当てている部分がヒクヒクと波打つ。
心臓の音が聞こえる。俺は右手をその部分にそっと這わせて、ゆったりとした振動を確かめた。
「お前がどこにいて何をしてるのかわからないのは耐えられないし、お前の人生から俺が消えるなんて考えられない」
ゾロの指が俺の髪を柔らかく撫ぜる。
「それから、俺の人生には絶対お前がいなきゃ駄目だ。だからどこにも行くんじゃねえ。朝起きたらいないなんて、そんな心臓に悪い事、もう絶対すんな」
くっと、そこだけ引き攣るみたいに胸を膨らませて、ゾロは笑った。
「笑ってんな。お前、ほんとに。俺がこの十日いったいどんな思いで…」
「悪かった…もうしねえよ」
ゾロは俺の頭を両手で包み込むようにしながら何度も撫ぜる。
俺は腕をついて伸び上がると、もう一度ゆっくり顔を近づけた。ゾロの顔に俺の影がかかる。鼻先が触れたところで、ゾロが目を閉じた。鼻からゆっくり息を吐いて、力を抜く。俺は目やこめかみや、鼻にもキスをして、耳から顎のラインを指先で撫ぜる。この意味にお前はちゃんと気付いてくれているんだろうか。
「なあ」
「ん?」
生返事をしながらちゅ、と音をたてて頬に吸い付くと、ゾロは片目を閉じて俺から視線を反らした。
「俺は賞金稼ぎをやるぜ」
俺は動きを止めて、ゆっくり体を起こす。これはちゃんと聞かなくちゃ。ゾロもそれに合わせて、肘をついてずり上がると、上半身を起こした。
とにかく話したい事がたくさんあって追いつかない。気持ちは急くのに、何から伝えればいいのか。俺たちは見つめ合ってお互いに言葉を探した。
「……それがいいのかもな」
俺が頷くと、ゾロはあからさまにホッとして表情を緩めた。なんだお前、そんな事心配してたの。俺が言うと、ゾロは唇を尖らせて俯いた。
「俺がなんで賞金稼ぎ嫌がったが、お前わかってるか?」
「おめえのいない所でやるのが嫌なんだろ」
あ、なんだこいつわかってるぜ。俺が笑うと、でももうやっちまった、と続けた。
初めて本気で狩りに行ったからな。案外楽勝だったぜ。五十人くらいならわりに軽いもんだな。聞き捨てならないセリフのオンパレードに俺の心臓はどこんどこんと強く鳴りっぱなしだ。
「おま…お前、さっきの…。襲ったって、襲ったってマジで…」
「おう、たぶん狙ってるって予想ついたからな。待ち伏せられたら絶対こっちが不利だし、俺の方から飛び込んでやった。作戦どおりだったぜ」
「何が作戦だ!おめえのそれは単なる無謀ってんだ!そんなとこへひとりで行きやがって…もしかしたら帰って来れなかったかもしれないんだぞ!」
言葉をぶつけるたびにぼんぼんとスプリングのきいたベッドが跳ねる。
「でも帰ってきたぜ?」
だから!そうやって可愛らしく小首を傾げたりするんじゃねえ!ああもう、本当にどうにかなっちまう。
「うう…」
「サンジ?」
「おめえ、そうやって俺が苦しむのを楽しんでやがるのか?」
「は?」
「俺は今こうやっててホントはすごくいろいろお前に触りてえのを我慢してるってのに、お前はそんな事どうでもよくって、だからそんなふうにからかったりすんだ…あーもう。言わせんなよこんな事…カッコ悪い」
「……だから、したいようにすりゃ良いって、俺は最初に言っただろ」
俺はぽかんと口をあけて、ゾロを見つめた。ゾロは照れくさいのか、目線を俺の喉下あたりに据えて、ちょっと顔を赤くしている。え?え?俺の頭の中には「?」マークが飛び交ってる。
「そういう意味だったの?」
「好きにとればいい。お前案外鈍いな。だからもてねえんだ」
そう言って俺の首に腕を回して引き寄せた。俺は招かれるままに頬を寄せ、唇を這わせた。最初っから俺の胸がぎゅんぎゅん鳴りっぱなしだったのはこいつが天然なりに俺に誘いを掛けてたからだったんだろうか。そんな幸せな事があっていいのか?
「うるせえよ。てめえだって」
もどかしくなって、俺はゾロの上着の裾を掴んで捲り上げた。胸の大傷。そこにも唇を落とす。いまだ熱を持つその部分。ほんとはもう、ずっとこうしてやりたかった。
ゾロはかすかに息をあげながら、視線は俺の頭の上や天井をさまよって落ち着かない様子だ。そりゃそうだろう、展開が早すぎる。けどこういうのは勢いが大事だからね。
「ゾロ」
伸び上がってもう一度唇を重ねる。お前の好きに、なんて。お前、そんなに全部許しちゃっていいのかよ。ゾロの腕が俺の頭を引き寄せて、だから俺のキスはだんだん荒く激しくなった。息を交わし、声を飲み込む。触れあう肌は熱い。腰から下腹へ、さらにその下へと手を這わせる。すこし恥かしいがそれもお互い様だ。
「…う、んっ」
ゾロの唇から苦しげに漏れる声。こんな声を聞くには、この朝の光に満ちた室内は本来似つかわしくないかもしれないが、 俺はそうは思わなかった。光を浴びて横たわるゾロはびっくりするくらいきれいだ。
好きだゾロ。ずっと好きだった。ゾロの吐息の熱さを肌に感じながら、まだ言葉にはしないまま、俺はそれを胸の中で繰り返した。