ペパーミント スカルセッション 5
「どっちでもいいけど」
野菜を混ぜ終えたところでボウルから手を下ろし、サンジは真っ直ぐにナミを見て一瞬だけすっと目を眇めるような表情をしたが、すぐに消した。
「ナミさん、あいつのこと好きなの?」
そう言った途端、ナミははあっと吐き出して、
「ダメだわ!やめた」
と大きく言い、カウンターに肘をついて姿勢を崩した。
「サンジくん、私とも友達になってくれる?」
顔を上げると晴ればれと笑っていて、サンジはつられるようにうすい笑みを浮かべる。
「もちろん。ナミさんならいつでも大歓迎」
「そういう軽いこと言うの、ゾロ嫌がらない?」
「信じられないって顔して見てるよ」
「でもあんまり立ち入ったりはしないもんね。あいつ、自分の事話したりする?」
混ぜ合わせた材料を耐熱皿に移してボウルを流しにことんと置く。
「ぜんぜん。俺もまあ、あえて聞かないし」
「クールなのね」
それは正しいとは言い難いとサンジは思ったが、だからといって逐一説明するのも煩わしい。ゆえに曖昧に笑うしかなく、そういう態度はナミにはあまり受け入れられていないようだった。
「ナミさんはあいつと長いんでしょ?」
大体の準備が済んだところで、サンジは煙草に火をつけ、テーブルの方に回りこんだ。
「高校からだから、三年ちょっとかな。だからね、意外なの。ゾロがサンジくんみたいなタイプの人と仲良くしてるの見たこと無いのよ」
「別に仲良くは無いけど」
嘘よ。そんなにいいじゃない。と、ナミは顔をくしゃっと顰めて笑った。自分の感情を振り返って、想像を疎むような笑い。
「ま、なんとかうまくやってるよ。安心した?」
煙草を歯でくわえたまま、にかっと口をあけて笑う。
「うん。でもおこがましい事を言うけど、ゾロにひどいことしたらただじゃおかないわよ」
ゾロには言わないでね、お願い、と舌を出したナミを、サンジは可愛いと思った。そして、こんなふうに思われているゾロをほんの少しだけ羨ましく思い、こんなふうに思うことを許されているナミにはさらに複雑な感情を抱いた。
「肝に銘じておきマス」
また曖昧に笑うしかないが、こんなことを言われて、一体他にどんな表情が出来るっていうんだろう。
日はすっかり落ちて、窓の外は藍色と水色を混ぜ合わせたような宵闇がおりている。サンジはリビングの方の照明を点けると、ロールカーテンを下ろした。月が出るまで、あと少しだ。
洗面所の扉が開いた。そのまま自室へ入っていくゾロの足音が聞こえる。
サンジはキッチンに戻り、作業台に置いてあった耐熱皿を持ち上げてオーブンに入れた。ナミは邪魔にならないようにそっとソファに戻る。
深く座り、背もたれに背中を預けて天井を見つめる。そして目を閉じ、この家で暮らしている彼らの日常を想像してみた。朝早くおきて朝食の支度をするサンジ、起こされて寝ぼけ眼で食卓につくゾロ、その傍らでしずくがミルクを貰っていて、窓から差し込む光がリビングを次第に明るく染めていく。
「ねえサンジくん、お店のオープンには手伝いに来ても良い?」
振り向いて声をかけると、サンジの表情がゆっくりと満面の笑みに変わった。ほんの少し頬が染まっている。
「もちろん。すげえ嬉しい」
ナミも嬉しくなって、絶対くるわ、ゾロより役に立つわよ!と、しずくを抱えて階段を下りてきたゾロを見つめながら言った。
「お前ら、人のいないとこで何話してやがる」
ゾロは顔を苦々しくゆがめてみせたが、本心からではない事を、サンジもナミも気付いていた。
野菜を混ぜ終えたところでボウルから手を下ろし、サンジは真っ直ぐにナミを見て一瞬だけすっと目を眇めるような表情をしたが、すぐに消した。
「ナミさん、あいつのこと好きなの?」
そう言った途端、ナミははあっと吐き出して、
「ダメだわ!やめた」
と大きく言い、カウンターに肘をついて姿勢を崩した。
「サンジくん、私とも友達になってくれる?」
顔を上げると晴ればれと笑っていて、サンジはつられるようにうすい笑みを浮かべる。
「もちろん。ナミさんならいつでも大歓迎」
「そういう軽いこと言うの、ゾロ嫌がらない?」
「信じられないって顔して見てるよ」
「でもあんまり立ち入ったりはしないもんね。あいつ、自分の事話したりする?」
混ぜ合わせた材料を耐熱皿に移してボウルを流しにことんと置く。
「ぜんぜん。俺もまあ、あえて聞かないし」
「クールなのね」
それは正しいとは言い難いとサンジは思ったが、だからといって逐一説明するのも煩わしい。ゆえに曖昧に笑うしかなく、そういう態度はナミにはあまり受け入れられていないようだった。
「ナミさんはあいつと長いんでしょ?」
大体の準備が済んだところで、サンジは煙草に火をつけ、テーブルの方に回りこんだ。
「高校からだから、三年ちょっとかな。だからね、意外なの。ゾロがサンジくんみたいなタイプの人と仲良くしてるの見たこと無いのよ」
「別に仲良くは無いけど」
嘘よ。そんなにいいじゃない。と、ナミは顔をくしゃっと顰めて笑った。自分の感情を振り返って、想像を疎むような笑い。
「ま、なんとかうまくやってるよ。安心した?」
煙草を歯でくわえたまま、にかっと口をあけて笑う。
「うん。でもおこがましい事を言うけど、ゾロにひどいことしたらただじゃおかないわよ」
ゾロには言わないでね、お願い、と舌を出したナミを、サンジは可愛いと思った。そして、こんなふうに思われているゾロをほんの少しだけ羨ましく思い、こんなふうに思うことを許されているナミにはさらに複雑な感情を抱いた。
「肝に銘じておきマス」
また曖昧に笑うしかないが、こんなことを言われて、一体他にどんな表情が出来るっていうんだろう。
日はすっかり落ちて、窓の外は藍色と水色を混ぜ合わせたような宵闇がおりている。サンジはリビングの方の照明を点けると、ロールカーテンを下ろした。月が出るまで、あと少しだ。
洗面所の扉が開いた。そのまま自室へ入っていくゾロの足音が聞こえる。
サンジはキッチンに戻り、作業台に置いてあった耐熱皿を持ち上げてオーブンに入れた。ナミは邪魔にならないようにそっとソファに戻る。
深く座り、背もたれに背中を預けて天井を見つめる。そして目を閉じ、この家で暮らしている彼らの日常を想像してみた。朝早くおきて朝食の支度をするサンジ、起こされて寝ぼけ眼で食卓につくゾロ、その傍らでしずくがミルクを貰っていて、窓から差し込む光がリビングを次第に明るく染めていく。
「ねえサンジくん、お店のオープンには手伝いに来ても良い?」
振り向いて声をかけると、サンジの表情がゆっくりと満面の笑みに変わった。ほんの少し頬が染まっている。
「もちろん。すげえ嬉しい」
ナミも嬉しくなって、絶対くるわ、ゾロより役に立つわよ!と、しずくを抱えて階段を下りてきたゾロを見つめながら言った。
「お前ら、人のいないとこで何話してやがる」
ゾロは顔を苦々しくゆがめてみせたが、本心からではない事を、サンジもナミも気付いていた。
2003.8.15発行(文庫再録/2008.8.15)
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