ペパーミント スカルセッション 3

「あ、帰って来た」
 裏道から門を目指して歩いていくと、門の前に小さな影が三つ、立っているのが見えた。ゾロは目を凝らす。
「近所のガキだ」
 サンジが呟いた。
「おにいさーん!おにーいさーん!」
 サンジとゾロが歩いてくるのを見つけて、子供達は三人そろって声を上げた。両手を上げてバラバラに手を振っているなかで、ひとりだけ、腕を胸の前で組んで何かを抱えている子供がいる。ゾロは目を見開いた。ゆっくりと驚きから喜びに変わっていく表情に、サンジもすぐに気付き、二人は同時に駆け出した。
「きゃん!きゃん!」
 しずくがゾロの姿を見つけて声を上げた。
「しずく!」
 子供達は頬を紅潮させて、僕が見つけたんだ!僕だよ!と口々に言う。学校の方に歩いてきてたんだ。ここの犬だってすぐにわかったからさ!いないみたいだったから待ってたんだ!
 サンジが、わかったわかった、有難うな。よくつれてきてくれたな、と、頭を撫でて三人を労っている。力任せにぐりぐりとやったので髪がくしゃくしゃだ。子供達は誇らしげに笑っている。
 ゾロはしずくを受け取ると、汗の染み込んだTシャツにくっつけるように抱き込み、頭に鼻を押し付け、すう、と息を吸い込んで、吐いた。よかった、と声に出さずに呟いたのを、をサンジはかすかに聞いた。
「ありがとう」
 ゾロは三人の前に進み出て、かくん、と頭を下げた。
「お前ら、ちょっと寄ってけ」
 サンジが言うと、三人はわあっと声を上げた。家に通されてテーブルにつき、出されたデザートを見て上げた声は、その三倍も大きかった。
サンジは冷蔵庫から次々とゼリーやババロアを取り出して並べていく。ひととおり出してしまうと、咥えていた煙草を手に持ち直し、ふうっと煙を吐き出した。
「デザートの試作品だ。ちょうどいいから食ってけ。全部食っちまっていいぞ」
 三人の子供達はすげえ!美味そう!と嬉しそうに声を上げている。それを聞きながら、ゾロはボウルの水を勢いよく飲んでいるしずくを優しげな目で見つめていた。サンジが気付いて声をかける。
「なあゾロ、バイト行けるんじゃねえのか?」
 ゾロはゆっくりと振り返って見上げる。気が抜けたような険の無い顔をしていた。サンジはなんとなくホッとして眦をさげる。
「疲れちまった。もう出かける気力がねえ」
「そうだなあ…」
「人は足りてるはずだから」
 しょうがねえな、と笑うサンジに、ゾロも同じような苦笑を返した。まったくくたびれた。しずくは何も無かったかのように、今度は腹が減ったと無邪気に鳴いている。
「ゾーロー!」
 外から呼ぶ声が響いて、ゾロはぱっと顔を上げて立ちあがった。
「ナミだ」
「ナミさん?!」
 サンジが身を翻して玄関ドアに走った。そっとドアノブを回し、いらっしゃいませナミさんはじめまして、サンジです。と恭しい調子で言った。
「あら有難う。はじめましてサンジくん。その様子だともう見つかったみたいね?何で連絡しないのよゾロ!気が気じゃなかったわよ。急いで来ちゃったじゃないの。あーあっつい!疲れた!」
 ドアからつかつかと室内に踏み込み、顔をゾロのほうに向けてナミが言う。
「あ、悪ィ。すっかり忘れてた」
「まったくもう!」
 やってくるなり男達に向かって捲くし立てるオレンジ色の髪の綺麗なお姉さんを前に、子供達はぽかんとして手を動かすのもやめてしまっている。
「ほら、お前ら、もう食っちまえよ。そろそろ帰らねえと、家の人が心配するぞ」
 ゾロが言うと、そうだ!かあちゃんに怒られる!と言って、残りのデザートに取り組み始めた。サンジは笑って見ていた。    
[TOP/NEXT]