海賊が死んだ島 1

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 その男には一度だけ会ったことがある。俺はまだホンのガキで、背丈はやっとジジイの腰の高さを超えたところだった。ジジイ左側に立ち、少し前に進み出て見上げた毛むくじゃらの顔は日に焼けて赤く、大きく口を開けてしわがれた声で豪快に笑うと、俺の頭に手を置いて名前を呼んだ。
「おめえがサンジか」
 そしてジジイの顔をまっすぐ見て、すっかり険が取れたと言って笑った。ジジイは静かに笑ってその言葉を許していた。
 まだ店を開いて間もない頃のことだ。あれ以来一度もジジイの友人だという人間には会ったことがない。後にも先にも、あれきりだ。

 あの男にもう一度会えたら、訊いてみたいと思っていた事がある。海に出てから、ずっと。

 
 ―――― あんたの夢はかなったか?


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